第1章 プレイメイカーを拘束せよ
__ある記憶__
「はっ……あ、」
無機質な白の空間。
デュエルディスクとVRゴーグルを身につけた少女が、呻き声を洩らして横たわっていた。
少女の傍には、仕切りのある皿が置いてあり、四角い緑色のゼリーが盛ってある。先程のデュエルで勝利した為、必要最低限の食事をどこからか提供されたのだ。
「くる、しい」
ゼーゼーと呼吸をしながら、少女は胸のあたりをギュッと握り締めた。
少女______文香は、ある1人の少年が何者かに強引に連れて行かれるところを目撃してしまった。泣き叫ぶ少年を見た時、彼は連れ去られるのだと幼心に理解した。名も知らぬ彼に手を伸ばした瞬間、文香の意識は途切れた。きっと何者かに、意図的に気絶させられたのだろう。
そして、たまたま目撃してしまった文香は、この空間に閉じ込められたのである。
文香は喘息を患っており、「デュエルで勝利しなければ食事を取れない」、「負ければ電気ショックが体を痛めつける」と言った恐怖やストレスから、発作が起こってしまった。突然此処に閉じ込められた為、薬もなければ外の空気を吸うことも出来ない。
「……う、ぁ、」
一段と呼吸が苦しくなった瞬間、バタバタと誰かの走ってくる音が、文香の耳に届いた。