第1章 プレイメイカーを拘束せよ
「プレイメイカーですか……」
「ああ。 見つけ次第、身柄を拘束してほしい。 彼の首には金がかかっているからな。 必要に応じてデュエルを仕掛けなさい」
リンクヴレインズの路地裏で、私と筆頭______レイス様は声を潜めて話をしていた。
彼は私の上司だ。
「望んだものを1つ与えられる代わりに、彼に従う」といった契約の元、私はこうして彼の命令を聞いている。
だが肝心のプレイメイカーはここ3ヶ月、リンクヴレインズに現れていないので、私は不思議に思った。
「身柄の拘束以前に、彼は3ヶ月前から姿を消したのでは……?」
そう______あのハノイが消え去って以来、プレイメイカーも忽然と姿を消したのだ。イグニスを手にしたままなのか、そうでないのかは分からない。
「その通りだ。 だが、プレイメイカーは昨日姿を現したのだよ。 イグニスを連れてね……。 可能であればイグニスも捕らえてほしい。 あのAIには利用価値があるだろうから」
どうやらプレイメイカーが再び現れたことは、私が知らなかっただけでリンクヴレインズ中の話題になっていたらしい。
悪人の顔をして笑う彼を一瞥し、私は考えた。
果たして私にそんなことが出来るだろうか。あのリボルバーでさえ適わなかった相手だ。
黙って下を見ていると、レイス様が口を開いた。
「なに、難しく考えなくても良い。 仮に君が任務に失敗したとしても、私は君を消したりはしないから 。 私が消すのは裏切り者だけだよ」
そう言うとレイス様は、私の左肩に手を置いた。
「分かりました。 できる限りのことはしましょう」
私は顔を上げて答えた。
「期待しているよ。 それでは私はログアウトするとしよう」
「はい、また後日に」
彼は恩人なのだから、私も死力を尽くさねば。
「やらなきゃ」
レイス様がログアウトした後の空虚を見つめながら、私は自分でも驚くくらいの低い声で呟いた。