第5章 【SS】武装探偵社入社試験
暫く待合室で待っていたが
看護師に呼ばれ、診察室へ入った。
其処には四十後半くらいの男性医師がいた。
名札には阿部慎也と書かれていた。
「阿部医師。三名の子供の失踪事件について
少しお話し伺ってもよろしいでしょうか?」
国木田君が切り出した。
「はい。少しなら大丈夫です」
阿部医師は微笑んで答えてくれた。
三人の症状についてや
調剤した薬など
少しでも多くの情報を聞き出そうとしていた。
「そういえば…少し嫌な噂を耳にしました。
最近、ある組織が子供の人身売買を行なっているそうなんです」
私は眉を潜めた。
「その話、詳しく伺えますか!?」
国木田君は飛びつくように阿部医師の話を聞いていた。
「有難うございました。
とても参考になります」
国木田君は最後に医師にお礼を述べた。
ふと、医師と目が合った。
何故か吸い込まれそうな瞳。
目を離すことが出来なかった。
「萩原?」
国木田君に呼ばれハッと我に返った私は「何でもないです」と答え
診察室を後にした。
● ● ●
クリニックを出て直ぐ、国木田君は電話をかけ始めた。
「太宰!仕事だ!
いまこの辺りで人身売買を行っている組織の噂を耳にした。
その組織について調べてくれ。
夕刻には乱歩さんが戻られるが
其れ迄には片をつけたい。
文句を言うな!」
ぶーぶーと文句を言っているだろう治ちゃんを無視して
国木田君は電話を切った。