第3章 黒の時代(本章)
治ちゃんはぽつりと呟いた。
「広津さん
今回の奴等が襲ったのは唯の武器庫じゃない。
ポートマフィアの最高保管室のうちのひとつだ。
もちろん警備も厳重だ。
敵はそれを易々と無効化し
しかも正規の暗証番号で中に侵入している。
この番号は準幹部級の人間しか知らない。
敵はどうやってそんな最高機密情報を手に入れたのだろうね?」
私と広津さんの表情が強張った。
どの可能性を考えても
導き出される結果は最悪だ。
「敵組織の情報は判らぬのですか」
広津さんが感情を殺した声できいた。
「うちの部下が
昨日の捕虜を拷問して
情報を吐かせようとしたのだけど…」
治ちゃんと目が合い
私はバツが悪そうに目線を逸らした。
「一瞬の隙をついて
奥歯に仕込んだ毒をあおって自害したそうなのだよ。
ただ一言聞き出せたのは
敵組織の名前ーーーー"ミミック"」
その時、治ちゃんの携帯が鳴った。