第2章 黒の時代(序章)
しばらくすると
慌てて階段を駆け下りる足音がした。
「主役の登場だ」と治ちゃんが階段の方をみた。
「遅くなってすみません!」
走って来たのだろう。
乱れた髪を直しながら葉月が謝罪した。
「大丈夫ですよ。葉月さん。
さぁ、座ってください」
安吾が着席を促すと
織田作が自分の隣の椅子を引いた。
葉月が席に座ると同時に
マスターが、先刻私が頼んでおいたカクテルを
葉月の前には置いてくれた。
「今日は私の大切な葉月ちゃんのために集まってくれて有難う。
葉月ちゃん昇進おめでとう」
治ちゃんの言葉でみんなで乾杯をした。
その夜は遅くまで飲み明かした。
その後、二.三回治ちゃんに連れられて
織田作と安吾とこの酒場で飲むことがあったが
葉月をいれて五人で飲む日は
この日が最後だった。