第15章 DEAD APPLE
葉琉の脚は動いていた。真っ直ぐ荘子の横を抜けようとするも阻まれる。流れる様な動きで右脚で蹴りを入れるが、それも荘子に防御された。
投げられた短刀を確認すると、どうやら葉月の顔の横に刺さったようだ。たぶん、態と外したのだろう。
「そんな事しなくても、お相手しますよ」
睨みつける葉琉を物ともせず、荘子は笑顔を崩さない。
一度距離を取り、葉琉は右手を上に上げる。凄まじい冷気と共に、葉琉の上に躰程の大きさの氷が形成される。先端は鋭く尖っている。容赦なくその氷を荘子目掛けて投げつけた。その氷の鏃は荘子の左腕を掻っ攫う。続けるように葉琉の左手には新たな氷の鏃。次は荘子の右腕に目掛けて飛ばす。呆気なく、人形のように両腕を失った荘子。葉琉は攻撃の手を止めた。
「私は武装探偵社の者です。これ以上の攻撃はしません。投降してください」
躰のバランスが取れず、少しふらつく荘子に冷たい視線を向ける。荘子の表情は俯いていて判らない。
クククッ……微かな笑い声が広間に響く。荘子はこの状況で笑っていた。顔を上げ「本当に君は何も知らないね」と告げる。
次の瞬間、荘子の両腕は何方とも付いていた。生えてきたわけではない。その場に現れた様に付いたのだ。
葉琉は目を見開く。驚きで声が出ない。
「私の能力はね『夢』なのだよ。私自身が夢。私は不死身だ」
戻った両手を広げ、目を細めて笑う荘子。「さぁ、次はどうする?」と葉琉に尋ねた。
その時、塔全体が大きく揺れ始めた。