第15章 DEAD APPLE
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「このまま異能が戻って来なかったらどうしよう…」
吐息交じりに敦は呟いた。鏡花が運転する車は濃い霧の中を猛スピードで爆速していた。
「この霧の中、こんなスピードで走って大丈夫?」
やや怯えながら、敦は鏡花に問いかける。鏡花は冷静に答えた。
「ヨコハマの地形は全て頭に叩き込まれている。暗殺のスキルは異能力とは関係ない。夜叉が追いつく前に出来るだけ距離を稼ぐ」
鏡花は覚悟を決めた眼差しで前を向いていた。不安そうな敦とは正反対だ。
カツン、と車の天井から音が聞こえた。
「来た」
鏡花の呟きの直後、車の天井を刀が突き破る。見覚えのある刃は夜叉白雪のものだ。鏡花は思い切りハンドルを切って、夜叉白雪を車上から振り落とそうとする。夜叉の刃が再び天井を突き破って来た。次の狙いは鏡花だ。鏡花が刃を躱し、夜叉白雪の刃は運転席のシートに刺さる。シートから刀を抜く僅かな隙を見逃さず、鏡花は敦の首を掴んで車を飛び出した。