第15章 DEAD APPLE
葉琉と安吾が作り出した殺伐とした空気から、再び緊張感のあるものに戻った。葉琉はその場にいる国木田、敦、鏡花に視線のみで依頼の諒解を得て、「そういえば」と画面に視線を戻した。
「治ちゃん知らない?」
『太宰君は……どうやらその首謀者と同じ場所にいるようです』
「太宰が?」
厭な予感がしたのか、国木田がぴくりと片眉を上げる。
「捕まってるってことですか?」
敦の言葉を受けて、安吾の顔に初めて動揺が走る。焦ったように、声を荒げた。
『このままではヨコハマが全滅します。貴方達だけがーー』
ーープツン、ザザー。
安吾の声が途切れ、雑音が大きくなる。画面は乱れ、再び砂嵐になった。葉琉の顔がサーっと青くなったのを国木田は見逃さない。葉琉、と声を掛けようとした時、轟音が響き、事務所が揺れる。
「来たか……」
国木田が眉を寄せた。音と衝撃の度合い、位置、そして数刻前の経験からして、何が起こったのか国木田には察せられた。これは、武装探偵社の入るビルに手榴弾が投げられたのだ、と。おそらく相手は、国木田の異能、"独歩吟客"である。
「お前達は先に行け。奴は俺が食い止める」
「でも、国木田さん」
動こうとする国木田を敦が追おうとする。
「自分の異能力になんて勝てるわけが……」
「勝てるかどうかではない」
国木田が立ち止まる。
「戦うべきかどうかだ。俺は己に勝つ。いつだってそうしてきた」
宣言と共に、国木田は壁に掛けられた掛け軸の奥の壁を叩く。天井から隠し棚が下りてくる。棚に並べられているのはいくつもの銃火器だ。
「これって……」
突然現れた武器に敦が慄く。
「うちは"武装"探偵社だぞ」
国木田が堂々と答え、拳銃とマシンガンを取り、慣れた手つきで装填する。「持ってけ」と敦と鏡花にも拳銃を渡す。ただし鏡花は「私はいらない」と即答した。