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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第15章 DEAD APPLE


探偵社内部は、誰もおらず、ひどい有様になっていた。

「うわ……なんだこれ……」

ひしゃげたロッカー、倒された家具、割れた照明、誰かに殴られたように陥没した机……。無茶苦茶だ。無事なものが見当たらない。激しい戦闘の跡に戸惑っていると、国木田が「社長室だ」と急かした。敦と鏡花は頷き、痛みと出血で呻く国木田を支え乍、社長室へと向かう。
葉琉も三人の後ろに付いて行くように歩みを進める。見れば見るほど探偵社に残された襲撃の跡は酷く、此処での惨劇を物語っていた。だが、他の社員の遺体が見つかった訳でもない。二年程一緒に働いて来た。経験豊富な皆なら、きっと自力で何とかしている。そう、信じているのだ。

社長室も他の部屋と同じ様に書類や家具が散乱していた。国木田は構うことなく社長の机を思い切り蹴飛ばす。其の儘、探偵証を取り出し、床に差し込み滑らせる。フロアタイルの隙間に光が走った。
小さく電子音が鳴り、床のタイルが持ち上がる。タイルの下に有ったのは、複雑そうな電子機器だ。
国木田は迷うことなく電子機器を操作し、掌紋認証を行った。室内に大きな音が響き、壁から液晶画面がせり出してくる。
画面には砂嵐が映り、雑音が走っていた。雑音の間には誰かの声がきこえる。葉琉はその声に眉を顰めた。

『暫く、このレベルをキープして下さい。とりあえず、妨害は出来ないようです……聞こえますか?』

画面の向こうで誰かが語りかけている。

『福沢社長ですか?』

「国木田です」

接続が悪いのか、乱れる画面に国木田が答えた。

「社長は現在行方知れずです。そちらは異能特務課で間違いないですか?」

(矢っ張り……)

葉琉の中で乱れる画面の向こう側の人物の正体が判った。しかし、動くことはせず、社長室の入り口で様子を伺っている。

漸く接続が安定したのか、乱れが消え、丸眼鏡をかけた学者風の青年が画面に映った。

『はい。僕は異能特務課の坂口安吾です。国木田さん、現在其方はどういう状況ですか?』

「俺以外には、ここに中島敦と泉鏡花、あと萩原葉琉がいます。それ以外の社員は、現在、行方不明です」

『……了解しました…』

国木田の回答に、安吾がやや沈んだ声で頷いた。
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