第15章 DEAD APPLE
皆が次々と会議室から出て行く中、葉琉は頬杖をついたまま動かなかった。敦に「葉琉さん?」と声を掛けられるも、「先に戻ってて」と告げるのみ。最後に国木田が部屋を出て、葉琉一人となった。端末を取り出し会議をサボった恋人に連絡を入れるが、電話には出ない。端末を持っている手がぶらりと下がり、そこから無機質な機械音が漏れる。
「治ちゃん……」
葉琉は澁澤龍彦を知っている。
会ったことはないが、資料として見たことがあった。
あれは、六年前だった。初めて実戦で【漂泊者】を使用した日だ。そして、双黒と呼ばれる所以を目の当たりにした日だ。
葉琉は上を向き、ゆっくりと瞼を閉じる。
意識が過去の記憶へと流されて行ったーー