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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第14章 【SS】慰安旅行


「「あっ…」」

太宰と中也の声が重なると同時に葉琉は黒い笑みを浮かべてゆっくりと振り返る。そして、手に五本ほど花火を持って突撃していった。

「あっぶないでしょ!」

「待ち給え!中也が避けるからではないか」

「俺の所為にすンじゃねぇ!そもそも、人に向けて撃つモンじゃねぇ!」

「喧嘩しないでって言ったのに治ちゃんは直ぐ中也にちょっかいかけるんだから!」

「あはははは!」

暴れていた三人は脚を止め、笑い声のした方へ視線を向ける。其処にはお腹を抱えて笑うと葉月が居た。三人は呆然と見つめていた。

「…おい誰だ。葉月に笑い茸喰わせた奴は」

「私ではない事は確かだよ」

「私でもないって。一番怪しいのは治ちゃんだよ」

「酷い!」

一人泣く真似をする太宰を無視して、中也と葉琉は恐る恐る葉月に近付いた。

「葉月、何か食べたの?」

「違う違う。何かもう可笑しくて、三人共変わらないなぁって」

葉琉と中也は顔を見合わせる。そして、二人で笑い出した。

「一寸、狡くないかい?」

太宰が背後から葉琉に抱きつく。それすらも何故か面白く、三人は笑い続ける。よく判っていない太宰だけがぽかんと三人を眺めていた。

「あ〜表情筋が仕事した」

笑い疲れた葉琉がふぅと息を吐く。葉月も花火を手に取り再開する。

「葉琉の表情筋が仕事してない日なんて有るのかい?其処の日陰者二人組なら判るけど」

太宰は葉琉の頰をぷにぷにと押している。

「聞き捨てなりませんね、太宰さん。私は表情豊かに生きてますよ」

「手前のは作り笑顔だろ」

「作った笑顔も結構表情筋使うんだよ」

「まぁ、中也には無理だよね」

「そんな事ありませんよ」

今度は葉月が中也の頰をぷにぷにと押す。「やめろ」と口では拒否するものの、特に抵抗しない中也。

「中也も部下の前ではキリッとしてますけど、二人の時は結構笑うんですよ」

「……やめろ」

中也は帽子を深めに被り顔を隠した。口に手を中ててニンマリと笑う太宰と葉琉に中也の蹴りが飛んだが、二人とも綺麗に躱した。
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