第14章 【SS】慰安旅行
「慰安旅行ぉ?」
組合戦も無事に終わって数日が経ったある日、探偵社事務所に葉琉の声が響いた。葉琉は机に突っ伏した儘、その"慰安旅行"を提案した国木田に視線だけを向ける。葉琉だけでは無い。乱歩、与謝野、谷崎、賢治、太宰…は何時もの事なのだが…探偵社員の殆どが葉琉と同じ状態であった。謂わば大きな戦いの後の『燃え尽き症候群』という奴だ。元気なのは敦と鏡花と国木田くらい。あぁ、社長も変わらずである。
「何でも、社長のお知り合いの方がとある旅館を経営されているそうで其処へ招待されたと…」
「旅館?温泉!?」
葉琉は目を輝かせて飛び起きた。正確には突っ伏していた全員の表情が生き生きとしたものに変わったのだ。
「出発は三日後です。では希望者を募ります。行きたい方ー…」
国木田が最後まで言葉を発する前に結果は決まった。
こうして社長引率の元、乱歩、与謝野、太宰、国木田、葉琉、谷崎兄妹、敦、賢治、鏡花、十一人の一泊二日の慰安旅行が決まった。
場所は車で一時間程の場所、海の見える旅館だそうだ。一同、三日後の旅行に向けて各々の仕事に漸く取り掛かった。