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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第12章 双つの黒と花の役割


敵は消えた。だが、中也は止まらない。ぼたぼたと血を流し、手に作った重力子弾を辺りに投げつける。

「葉琉!」と葉月が手を出すと植物男を離し葉琉も葉月の手を取った。

「「過去より来りて未来を過ぎ久遠の郷愁を追ひくもの。
いかなれば滄爾として時計の如くに憂い歩むぞ」」

最後に中也の悲鳴に似た笑い声が聞こえた。
時間は凍りついた。

太宰は素早く中也に近付き葉琉達に能力を解くように伝える。能力を解くと同時に太宰は中也の振り上げられた腕を掴んだ。

「敵は消滅した。もう休め、中也」

侵食していた痣が消えて行く。葉月は能力を解くと同時に中也の元へ走って行った。葉琉は葉月と繋いでいた手を見つめる。

(今回は力が流れ込む感覚が少なかったなぁ)

少しづつだが、葉琉の中でも判り始めていた。しかし、葉月は答えないだろう。となるともう一人に聞くまでだ。葉琉は傍にいる植物男を立たせ「ほら、行くよ」と歩かせた。

「信じられない……あのラヴクラフトが……君達は一体」

植物男が驚いた様子で辺りを見回した。太宰は微笑むと「悪い奴の敵さ」と答えた。如何やら中也は葉月の腕の中でお休みの様だった。

「さぁ、葉琉。私達も帰るとしよう。君も消えるといい、中也がこんな状態でもまだ此方の方が戦力は上だ」

葉琉が植物男を離すと黙って何処かへ消えて行った。完全に居なくなった事を確認すると葉琉は緊張が解けたのか欠伸を始める。

「数秒でも眠気は来るねぇ。まぁ、堪えられるものだけど」

太宰は葉琉の頭をぽんっと撫でると「お疲れ様」と笑った。葉琉は少し照れて目線を逸らした。

「却説、葉月ちゃん。君を拠点まで送ろう」

「大丈夫です。此処で中也が目覚めるのを待ちます。少し、話さなきゃいけない事もあるので」

「……決心はついたのだね」

「…はい」

「では、何れまた何処かで」

「気を付けて下さいね、太宰さん。葉琉もまたね」

「じゃあね、葉月。中也にも宜しくね」

太宰と葉琉は登ってきた山道を二人で歩いて行った。
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