第2章 ***
ハァ…と深く溜め息をついた後、蛍くんはじっと私の顔を見つめた。
「陽菜ちゃんの事を避けてたのは事実……ごめん」
「……、」
「でも興味が無くなったとか…陽菜ちゃんの事を嫌いになった訳じゃないんだ……むしろその逆だよ」
「…え……?」
「君と付き合い始めてから…どんどん君の事を好きになって……これ以上触れ合ったら、自分を抑えられなくなるって解ってたから…」
「……、蛍くん…」
こんな風に彼の気持ちをちゃんと聞いたのは初めてかもしれない。
告白したのも私からだったし、いつも私ばかり彼の事を想っているような気がしていたから…
「高校を卒業したとはいえ、君はまだ未成年だ…。年上である僕が理性を失うなんてみっともないだろう?」
「そ、そんな事ない!私は嬉しいよ…?こうやって蛍くんの気持ちが聞けた事…」
「…陽菜ちゃん……」
安心した…全部私の誤解だって事が分かって…
少しでも浮気の可能性を疑ってしまった自分を恥じる。
こんな事なら、最初から思い切って打ち明ければ良かった…
「…キスしてもいい?」
「…うん」
こくりと頷き目を閉じると、彼が優しく唇を重ねてくる。
ただ触れ合うだけのキスがこんなにも心地良いものだなんて…
「んっ…」
何度も啄むようなキスを繰り返す彼。
久しぶりの彼とのキスに、胸が熱くなり体から力が抜けていく。
一旦唇を離した彼は私と目を合わせ、ふわっと優しく笑ってくれた。
「…可愛い」
「……、」
「陽菜ちゃん…ケータイ持ってる?」
「…?」
不意にされた質問。
勿論持っているので小さく頷くと、彼がそっと耳元に唇を寄せてきた。
「じゃあ家に電話して…?今日は帰れないって…」
「っ…」
「"俺"もずっと我慢してたから…今日はゆっくり時間を掛けてセックスしよう…?」
「…!」
いつも自分の事を"僕"と言っている彼が"俺"と言うのを初めて聞いた。
それに、彼の口から"セックス"だなんて直接的な単語を聞いたのも初めてだ。
それから私は、彼に言われた通り家に電話を入れた。
彼氏の家に泊まるとは言いづらかったので、友達の家に泊まると嘘をついて…
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