第2章 ***
──ピンポーン…
私は震えそうになる手でインターフォンを鳴らした。
今更だけど、連絡も無しに訪ねて怒られたりしないだろうか…
そんな不安にも駆られる。
それから数十秒も経たないうちに目の前のドアが開き、中から蛍くんが顔を出した。
当然彼はひどく驚いた様子で…
「陽菜ちゃんっ…こんな時間にどうしたの?」
「あっ…えっと……今日友達と遊んでて……近くまで来たから、蛍くんの顔見たいなぁって思って…」
そう口から出任せを言う。
けれど彼はそんな私を疑う様子もなく、あっさり部屋の中へ上げてくれた。
「連絡も無しにいきなりごめんなさい…」
「いや、それは別に構わないけど……今度からは連絡貰えると嬉しいな。せっかく来てくれても僕が家を空けてたら申し訳ないし」
「……、」
そう言いながらお茶を淹れてくれる彼。
やっぱり蛍くんは優しい…いつだって私の事を優先に考えてくれているのだから…
それなのに。
(とりあえず誰かがいた形跡は無し…と)
こそこそと浮気調査をしている事に罪悪感を覚える。
彼は1人でDVDを観ていたらしく、テレビ画面には洋画が映し出されていた。
(ここに来るのも久しぶりだな…)
最後に訪れてからもう1ヶ月は経っているだろうか…相変わらず部屋の中は綺麗に整頓されている。
1ヶ月…私たちはもうそれだけの期間触れ合っていないのだ。
改めてそう思うと、また気分が沈んできてしまった。
「…陽菜ちゃん?」
そんな私に気付いたのか、蛍くんが顔を覗き込んでくる。
いっその事、思い切って聞いてしまおうか…
どうしてキスもHもしてくれなくなったのか…
「…あ、あのね……変な事聞いてもいい…?」
「…?何?」
「蛍くんて……まだ私の事好き…?」
「………」
ついストレートにそう聞いてしまった。
彼の顔を見る勇気は無かったが、戸惑っている様子がこちらにも伝わってくる。
「ど、どうしたの急に…」
「正直に答えて…?もし私に興味が無くなったなら…」
「そんな訳ないだろう?」
いつも穏やかな彼が少し強めの語調で私の言葉を遮ってきた。
そしてぎゅっと手を握ってくる。
「……、蛍くん…?」
「ごめん…陽菜ちゃんを不安にさせたの…僕のせいだよね」
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