第2章 ***
Hをする事だけが全てじゃない…それは解っているけれど。
以前はしていたのに、急に求められなくなれば誰だって不安になるだろう。
「彼が浮気してるって可能性は?」
「えっ!?」
「有り得なくはないでしょ?性欲は他の女で満たしてるから、アンタとは会うだけでいいのかもしれないじゃん」
「……、」
そんな…蛍くんに限って浮気だなんて…
当然その可能性を考えた事が無かった訳ではないが、誠実な彼の事…もし私以外に気になる人が出来たらちゃんと話してくれると思うのだけれど…
「そーだ!今度アポ無しで家訪ねてみたら?」
「…へ?」
「もし浮気してたら部屋に女連れ込んでるかもしれないし、家の中に日用品とか持ち込んでるかもよ?」
「……、」
それってもう私の方が"浮気相手"で、向こうが"本命"じゃない…?
そんなの立ち直れない…
「でも陽菜だってこのままでいいとは思ってないんでしょ?」
「…それはそうだけど……」
「もしそんな浮気彼氏だったらさっさと別れた方がアンタの為だし、試してみる価値はあると思うよ?」
「け、蛍くんはそんな人じゃないから!」
なんで浮気してる事前提なのよ!
そうムキになる私を見て知佳が意地悪そうに笑う。
「彼がシロだって信じてるなら、躊躇する事ないんじゃない?」
「…ぐ……」
何だか知佳に言いくるめられているような気もするが、私だってずっとモヤモヤしたままなのは嫌だ。
彼女の言う通り、浮気相手がいるかいないかだけでも確かめたい。
結局私は次の蛍くんの休日を聞き出し(勿論デートの約束はしなかった)、当日アポ無しで彼の家を訪問してみる事にした…
(…緊張してきた……)
知佳に背中を押されてから数日後…
私は蛍くんに内緒で彼のマンションを訪れ、その部屋の前に立っていた。
予め聞いていた情報では、今日と明日蛍くんは珍しく連休だという事だ。
今の時刻は20時。
もし…万が一彼が浮気をしているとすれば、本当に女の子を連れ込んでいるかもしれない。
彼を疑うのは心苦しかったが、知佳にああ言われ私もだんだん自信が無くなってきてしまった。
(…どうしよう……)
もしこの扉の先に、最悪な状況が待っていたとしたら…
けれどここまで来て引き返す訳にはいかない。
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