第9章 ネモフィラ
「おはよう…ベッドありがとう」
朝になり居間に行くとしっかりと変装した沖矢昴が珈琲を飲みながら新聞を見ていた。
変装後の赤井秀一に気になり1周してみた。
「なんだ?」
「なんだって…いや普通にすごいなぁって」
沖矢はチラッと視線を送るだけで新聞に視線を戻した。
「あ。私の服…。ありがとう」
ソファーに丁寧に畳まれていた洋服を手に取り持ってきたバッグの横においた。
「はい。忘れてたからこれ…」
トートバッグから1枚の名刺を取り出し渡す。
珈琲を飲む手を止め沖矢はそれを受け取りまじまじと見つめた。
「裏にID書いておいたから…。後でLINEして?………なに?」
凝視する相手を訝しげに見ながら問う
「お前…本当に医師だったんだな。」
頭を殴られたようにショックをうけ愕然としてから名刺を取り返そうとし「きゃっ」と小さな悲鳴を上げ沖矢に抱き締められるかたちでソファーに倒れ込んだ
「もう…。そこまで嘘つくわけないじゃん」
「ははっ。」
と沖矢昴の声で笑う姿に呆れながらも
体制はそのままでぽんぽんと背を叩くと、
沖矢も同じ行動をして口をあけた
「すまなかった。俺は…」
は沖矢の口に手を当て目を瞑って首を振った。
「組織にいるのはそういうことだとわかっていたのに。
責めてごめんなさい。
零のこともちゃんとしなくちゃ…」
語尾になるにつれてボソボソっと小声になる。
そっと沖矢の肩に頭を起き目を閉じた。