第5章 彼女のため
「お前が本気なら、俺は容赦しねぇぜ?」
「本気も大本気だよ。ルナを傷つけた罰だ」
お互いに真剣な表情で、向き合う。
それとは逆に、紅玉や魔導師たちは冷や汗を流す。
「こ、紅覇お兄様、ジュダルちゃんっ…け、喧嘩はやめてよぉ…」
「うっさい。紅玉は黙ってて」
「コイツが本気っつってんだ、邪魔すんなよババア」
「~っ」
2人の言葉を聞いて、泣き出しそうになる紅玉。
その涙を引っ込めようと、腕の中にいて苦しそうな呼吸を繰り返すルナを見下ろす。
「ルナちゃん…私、どうすればいいのかしらぁ…っ」
目を閉じていたルナは、そっと目を開く。
目に涙をためる紅玉を見た彼女は、紅玉の頬にそっ…と、手をそえた。
『…だいじょ、ぶ…だよ…、紅覇は…ただ悲し、でるだけ、だ…から…』
苦しそうに微笑むルナに、紅玉はついに
涙をこぼした。
「どうして、分かるのぉ…っ?」
『…紅覇、ね…?私の、こと…す、ごく大事に…して、くれて、て…』
「っ」
『くれ、てるから…わかるの、私…』
紅玉は、涙でルナの頬を濡らしていく。
『心配して…悲しんで、く…れて、る…だけなんだ、よ…紅覇は』
ルナの頬が、氷で固まってしまっていた。