第7章 秘密の花園/前編
あの夢のような天体観測から数日後。
安土から越後に戻った俺は幸村を茶屋に誘い、ひと通りの経緯を報告していた。
「…というわけで、無事 莉菜さんとお付き合いすることになったんだ」
「ふーん、良かったじゃねーか。俺が茶や飯粒や鯖まみれになった甲斐があったな」
縁台に座り、互いにお茶をすする。
冗談を言いながらも自分のことのように喜んでくれるズッ友には感謝しかない。
「その節はすまなかった。お詫びと言っては何だけど、今日は好きなだけ食べてくれ」
俺が店評判の串団子を勧めると
「おー、じゃー遠慮なく」
幸村はそう言って、次々と団子を頬張った。
「けど お前も大変だよな。まさか敵陣の女と恋仲になるなんて。信玄様と謙信様は理解を示してくれてるみてーだけど、向こうはそう簡単には行かねえだろ」
「うーん」
そうだ、その問題が残ってる。
莉菜さんは安土軍の武将たちに異様に可愛がられているから…
それこそ莉菜さん一人を守るために全武将が動いても不思議じゃないくらいに。