第4章 男子会・春日山城城下の大衆食堂に於いて
「なーんだお前たち、天女のこと知ってるんじゃないか」
そこに信玄様が呑気な口調で入って来た。
佐助すまねー
口滑らしちまって…
なんとか辻褄合わせてくれ……
「はい、すみません。実は知ってました。信玄様の話の途中で気が付いて…… でも信玄様の話の腰を折るのも嫌だったのでつい」
佐助が真摯に謝る。
こーゆーところは潔いんだよな、こいつ。
「はは、気にするな。あれだけ人気の彼女なんだから、しょっちゅう安土に出入りするお前たちが知っていても何ら不思議はない」
信玄様がおおらかに言うと、佐助の表情がキリリと締まった。
「彼女は俺の友人なんです。幸村には軽く話してはいますが……」
「なるほど、友人か。それなら話は早い。佐助から幸を勧めてやってくれないか?」
っ!
だーかーらー!
俺は要らねえって言ってんだろーが…!!
あまりのしつこさに俺が項垂れていると
「それはできません」
佐助が凛とした声でキッパリと言い切った。
「できない?それはどうしてだ?」
「それは…」
「それは?」
「俺が彼女を本気で好きだからです」
刹那…ーーー
(ガキィィィン!!!)
謙信様が抜刀して佐助に斬りかかった。
佐助も背中の刀を抜き、間一髪のところで謙信様の一撃を防いでる。
「佐助…… 女には惚けるなと何度も忠告しておいたはずだ」
「くっ…!」
「女にうつつなど抜かしてるとロクな目に合わん。戦場で首が飛ぶぞ」
ギリギリと音を立てて双方の刀が擦れ合う。
「…っ、謙信様、申し訳ありません…… でも俺は… 何を言われようと彼女への気持ちを曲げるつもりはありません… それに、戦場で簡単に死ぬ気もありません、彼女の、為にも…っ」
「ほざけ。一瞬の気の緩みが命取りだとあれほど教えてやったというのに… 今ここで俺に斬られたいのか」
「………っ!」
佐助が押されてる、
謙信様の方が僅かに力が上だ…!
どーする佐助……!?