第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「…る」
「ああ? 何か言ったか?」
「まる」
「はぁ? 聞こえねぇ〜な〜」
「眼鏡が無いと手加減しにくくて。だから困ると言ったんだ」
「? どういう意味だ、そ…ーー」
(パシッ…)
(ドッ!)
聞き終える前に刃物を叩き落とす。
そして密かに腹部を打つと、子分Aは呆気なくその場に崩れ落ちた。
「お客様ー! 眼鏡、あっちの棚の下にありました! あんなところにまで飛んじゃって… って、この人どうしたんですか!?」
眼鏡を見つけてくれた莉菜ささんが戻って来て、子分Aが気を失ってることに驚く。
「すまない、説明は後でできたらする。ひとまず眼鏡をありがとう」
眼鏡を受け取って無事装着…ーー
すると子分Cに体罰を与えていたリーダーが此方の騒ぎに気付き、俺の前に立ちはだかった。
「てめぇ… コイツに何した?」
「別に何も」
「またトボける気か。 おい!お前 何か見たか!?」
リーダーは言葉を濁す俺にではなく、スネを強打して動けない子分Bに尋ねる。
「いえっ… 一瞬のことで、俺にも何がなんだか」
良かった、子分Bの目にも映らなかったようだ。
でももうこれ以上は騙せない。
(やるしかないな)
ついに煙玉を使おうと懐に手を入れかけた時、
(カラカラカラ)
「うぃ〜っく、姉ちゃん〜 酒だ酒〜〜〜」
タイミングが良いのか悪いのか…
煙玉を取り出す直前に店の扉が開き、酔っ払った中年男性が入ってきた。
「お!? 何だお前ら、ケンカか!?」
店内の様子を見た男性は赤い顔でフラフラしつつも目を見開く。
そしてクルッと後ろを振り返り…ーー
「おぉ〜い! 誰か来てくれぇ〜〜! 鶴亀でケンカだぞぉ〜〜〜!! うぃっく」
外に向かって叫び始めた。
「チッ、面倒なことになりやがった… お前ら立て! ここは一旦ずらかるぞ」
「「へ、へいっ」」
「野郎、覚えとけ」
リーダーは気絶してる子分Aを背負い、去り際に俺に対して捨て台詞を吐くと子分BとCを連れて足早に店を去っていった。