第2章 手と手を繋いで
怒られるどころか快く受け入れてもらい、普通に話をする。
すごく不自然な状況なのにすごく落ち着く。
顔を見られただけでも満足だったけど、こうして話をしていると更に満たされていく自分が居た。
でも だからって長居はできない。
暗い部屋に二人きり、目の前には寝間着姿の君がいる。
加えて俺は今、戦帰りでいつもより気が立っているから。
理性が働くうちに、帰らないと……
「佐助くん…もしかしてだけど…何かあった……?」
「…え?」
莉菜さんが急に神妙な面持ちになり、首を傾げた。
「なんだかいつもより元気がないみたい。疲れてる?」
「…そう?」
「うん、なんて言うか、すごく辛そうな…」
「そんなことない。少し仕事をしてきた後だからかも」
鋭いな。
普通は気付かないだろう。
「ちなみに莉菜さん… 俺の顔って、見えてる?」
「ううん 見えない。ぼんやりと輪郭が見えるくらい」
「…だよな」
まさか莉菜さんも夜目が利くのかと思ったけどそうでは無さそうだ。
まぁ見えたところで、無表情な俺がさらに口布までしてるんだから 表情を読むなんて難しいだろうけど…
ということは、さっきから全部感覚だけで……?
「佐助くん、お仕事って…戦だったの?」
…っ
そんな事まで気付かれてしまった。
「ごめん……汗臭かった?変な臭いする?」
汗とか臭いとか、何を言ってるんだ俺は。
「臭いなんてしないよ」
俺の取るに足らない発言に対し優しく微笑む莉菜さん。
本当に、君って人は……
抱き締めたくなる衝動に、必死で耐える。
「佐助くん、手を出してもらっていい?」
「手を?」
「うん」
「…こうかな」
言われた通りに両手を浮かせて前へ出す。
すると莉菜さんの小さな手が伸びてきて、俺の手をふわっと覆った。