第9章 真夏の個人授業〜教え子の甘い誘惑〜/R18
莉菜さんの部屋にある小さな文机を挟んで向かい合わせに座る。
「では、今から読み書きの勉強を始めたいと思います」
俺がわざと芝居掛かった口調で言うと、
「はい!よろしくお願いします、佐助先生」
元来ノリの良い莉菜さんが座布団の上にきちっと正座をし直してお辞儀をした。
『佐助先生』、か。
「こちらこそよろしく」
開始早々、頬が緩みそうになるが、意識して表情を引き締めた。
この時代の文字は草書体、いわゆる崩し字と呼ばれるものだ。
崩し字には特に明確な基準はなく、しかも文字を書く人の書き癖が出るから読むのがすごく難しい。
漢字以外のカナ書きの部分は『変体仮名』といい、この変体仮名も、漢字を崩したような文字が使われていた。
この変体仮名を頑張って覚えると、そこそこ文章が読めるようになるはずなんだけど…
ひとつの音を表す文字が複数個ずつあるため、全部覚えるまでが大変だ。
「莉菜さん、変体仮名って知ってる?」
「うん、それは知ってる。漢字が元になってる字だよね?」
「そうそう… 今日はその変体仮名を ひとつでも多く覚えていこう」
「はい、佐助先生!」
「…………」
…可愛い。
返事をされただけでこんなにもキュンとするものなのか。
軽快なリズムで動悸を打ち始める中、読み書き学習が始まった。