第8章 秘密の花園/後編
(トタトタトタトタ………)
食堂の仕事が終わって城に戻った私は、廊下を軽やかに走っていた。
えーと、お晴ちゃんの部屋は……
確かここだな。
同じ襖ばっかりで、どこに誰の部屋があるのか本当に分かりづらい。
未だに間違うことがあるんだよね…
「お晴ちゃん、いる?私!」
目的の部屋の前で、小さく声をかけた。
「莉菜様!?」
すぐに中から返事が返ってきて、襖が開かれた。
茶系の着物がよく似合う、ぱっちり二重の可愛らしい女の子が顔を出す。
「莉菜様、どうされたのですか!?」
「急にごめんね… いま時間あるかな?」
「どうぞお入り下さい!」
「ありがとうー」
この子は お晴ちゃんと言って、安土城で働くお針子さんだ。
お晴ちゃんと私は歳が近くて気も合うことから、ここに住むようになってからずっと仲良くしてもらってる。
実は、心から信頼できる彼女にだけは佐助くんの話を打ち明けていた。
想いが通じ合ったことを報告した時、一緒に泣きながら喜んでくれたお晴ちゃん。
今では私にとってなくてはならない存在になっている。