第1章 月に吠える
「君たちは萩原朔太郎さんのところの双子ちゃんだね。
探していたんだよ。二人を。
資料でみた年齢より大分見た目が若いけど
異能力について少し聞いていたから確信が持てたよ」
太宰がしゃがみながら二人に視線を向けた。
葉月も顔を上げて太宰を見る。
「お父さんに…そんなこと聞いたこともない…」
信じられないという疑いの目を二人は向けた。
「奥様は知っていたみたいだけど…君たちには伝えていなかったようだね。
彼から二人の話は聞いているよ。
素晴らしい異能力をもつ双子だとね」
ニッコリと笑いかけてくる太宰に拍子抜けを食らう葉月と葉琉は
顔を見合わせた。
「おいッ!太宰!
説明しろ!どーなってンだ!」
一人置き去りにされていた中也が
思わず口を挟んだ。
「二人を本部に連れて帰るよ」
太宰は立ち上がりながら続けた。
「この二人は2週間前に捜索の指示があった
萩原さんの双子ちゃんだ。
……危うく君が殺し掛けたけど」
「待て太宰!先刻の反逆罪ってまさか…!」
「そ!首領の指令はこの二人の保護。
つまり、殺したなんて間違ってもやってはいけないのだよ。
一つ貸しだね。中也君」
太宰はニンマリと中也に笑いかけた。
その後、中也の声にならない叫びが倉庫内に木霊したのは云うまでもない。