第4章 西方組織抗争
ヨコハマとは雰囲気の異なる街だった。
ただ、同じ港町ということで
感じる潮風は似たものを感じた。
街を歩く人々も何処か忙しなく見えた。
「おい。路地は入ンなよ」
「わかってますよ」
ヨコハマと同じく此処にも裏の組織は多い。
表通りとは違い、一歩路地に入れば
其処が裏の世界の可能性もある。
初日から騒動を起こす訳には行かないのだ。
「それにしても。手前そんなんで闘えンのか?」
中也は私の格好を指摘しているようだ。
私は今一度、自分の服装を確認した。
白のワンピースに綾織の上着を羽織り
髪は下ろして眼鏡をかけていた。
確認した所で先刻の質問に少し疑問を感じた。
「一寸待って。闘うの?」
「わかんねェだろ」
腕を組みドヤ顔で言う中也に
少し呆れ顔をしてしまった。
中也の格好は
上着を脱いで、代わりに長めの丈の厚地カーディガンを羽織っていた。
帽子はそのままで、中也も眼鏡を掛けていた。
「あのね、中也さん。
此れ任務だからね」
「判ってる。だから何があるか判らねェだろ」
「中也なりに色々考えてたのね」
昔はやれ喧嘩だの、やれ戦闘だの
敵の拠点に乗り込むことが多かったが
太宰さんがいなくなり
幹部に昇進したこともあり
勢いで突っ込むことはなくなった。
それも、私達部下を思っての事だろうと
私は思っている。
「葉月」
「何ですか?」
私は観光雑誌に紙を挟み
メモを取りながら歩いていた。
側からは只の観光者だろう。
「手前はいいのかよ?
……家の話」
「いまその話やめて。
考えないようにしてるんだから」
「す、済まねェ…」
中也はバツが悪そうに言った。