第1章 月に吠える
これは二人のもつ異能力の本当の姿
世界を凍てつかせるほどの力だった。
「さッ!急いで出よう!時間がない!」
葉月は葉琉の手を引いて入り口から出ようとした。
だがそれは、先程現れた太宰の言葉で阻まれた。
「素晴らしい異能力だ。
時が凍ってしまった。
これが君たちだけの世界、なんだね。」
葉月は驚いて声の主、太宰を見た。
この男の云う通り。ここは二人だけの世界なのだ。
他の誰かかが踏み込める世界ではない。
何故なら、世界の時は二人の異能力で凍てついているのだから。
「なん…で…?」
葉月は声にならない声を絞り出す。
「簡単なことだよ。
私に異能力は通用しない。」
太宰はそう云うと二人に触れ、自分の異能力を発動した。
異能者ー人間失格
パリンッーー
世界が割れた。
時が動き出す音がした。