第1章 月に吠える
「はーい!そこまで!」
入り口のほうからもう一人、男性の声がした。
「手前…!今更何しに来やがった!」
中也は足を止め、先程いきなり通信を切った男、太宰治を睨みつけた。
太宰はヘラヘラと笑って手を振っている。
「やァ中也。君が反逆の罪で追われないように止めにきたのだよ。」
「あァ?反逆だァ?」
中也は分かっていない様子だった。
またしても急な来客に呆気にとられていた二人の少女は
ハッと我に返り視線を合わせる。
「葉琉。一旦引こう。」
葉月はそう云うと葉琉の手を取り立ち上がった。
二人は目を瞑り呟いた。
「「過去より来りて未来を過ぎ
久遠の郷愁を追ひくもの。
いかなれば滄爾として
時計の如くに憂い歩むぞ。」」
中也と太宰が二人に視線を戻そうとしたその時
世界は凍りついたー