第1章 月に吠える
中也は開けっ放しの部屋に飛び込んだ。
そこには、目を見張る光景があった。
首から血を流し倒れている
武器密輸会社の社長。
其れを鼠の死体でも見ているかのように
見下す少女が二人。
「……なんだ手前ら…」
驚きのあまり、絞り出したような声で呟いた。
少女はら目線を社長から中也に変えた。
よくみると二人は、十代になるかならないかくらいにみえた。
容姿もそっくりで
茶色混じりの黒髪が肩までつくか、つかないか
整った顔立ちで、身長は中也から見ても低かった。
唯一、違いがあるとしたら
一人は予想外の来客に不安そうな表情。
もう一人は好戦的な表情をしていた。
中也がもう一度問う。
次はハッキリと、怒号に似た叫びで。
「何なンだよ!手前らは!!」
不安そうな少女は、その声にビクつき
もう一人の少女の袖を掴んで少女の名前を呼んだ。
「葉琉!どうしよう!
関係ない人だよね!?巻き込めないよ!?」
涙目になりながら葉琉と呼ばれた好戦的な少女に問いかける。
「葉月!大丈夫だよ!
私が全部、片付ける!
葉月は援護をお願い!」
そう言って葉琉は両手を前に出した。