第2章 黒の時代
自分の執務室の扉を開けると
早くも中也が書類整理していた。
「おはよう」
「あァ。おはよ」
「珈琲飲む?」
「頼む」
ただの挨拶だった。
それなのに何故か顔が熱くなった。
急いで給湯室に行き珈琲を準備する。
まだ恥ずかしい。違和感なかったかしら?
そんな事を思いながら
もう一度確かめるように呟く。
書類と睨めっこしている彼に聞こえない声で
「ーー中也」
「なんだ?」
真後ろで聞こえた返事に驚き思わず入れかけの珈琲を零してしまった。
「ーーーッ!」
お湯が私の手にかかった。
「何やってンだ!莫迦!」
中也は私の手を取り急いで流水をかけた。
「……有り難う」
「…いや。驚かせちまったのは此方だ。悪い」
そういって中也は
私の手を握ったまま流水をかけ続けた。