第12章 DEAD APPLE
「葉月!何でこんな無茶を!そもそも……!」
凍りついた時間の中で、何時も葉琉に流れる力が葉月の中に込まれる。葉琉も違反を感じたのか、顔を強張らせた。
「葉月、何したの?」
驚く葉琉に、葉月は微笑む。
「太宰さんには無茶だと言われたわ。でも、試してみたかったの」
葉琉は慌てて手を放そうとする。しかし、葉月は放さない。
「終わったらちゃんと返すから」
「違う!そうじゃない!このままじゃ葉月の躰の負担が…。手だって冷たい……」
葉月の中にある別の力が、元からある葉月の力と葉琉から奪った力を、更に増幅させる。あまりの巨大な力に奥歯を噛み締めた。
葉琉の手を放し、【漂泊者】を解く。
抑えきれない冷気を放つ葉月に、荘子は目を細めて喜ぶ。
「私の贈品、使ってくれたのだね」
葉月の中にある別の力。葉琉の力を奪い、自分のものにした力。それは、荘子が澁澤のコレクションの中にあった結晶を使用した為だ。
荘子は葉月に殺して欲しいと言った。葉琉ではなく、葉月に。しかし、葉月が荘子を殺すことは不可能だった。葉月にはそこまでの能力はない。
ならば、葉月が更に能力を強化できる場を作ればいい。それがこの状況だ。荘子が葉月の能力を底上げする事は予想出来ていた。
力を奪われ、へたりと床に座り込む葉琉。横目で確認した葉月は地面を蹴って荘子に詰め寄る。右手には短刀を握りしめて。
左手を前に出すと、氷の塊が撃ち放たれる。それは荘子にあたり、ゆっくりと床に倒れ込む。そのまま地面に押さえつけるように、短刀を荘子の胸に刺し馬乗りになる。
「矢張り、まだ力は足りなかったようだね」
残念そうに微笑む荘子に、葉月は悔しそうに唇を噛んだ。