第12章 DEAD APPLE
●●●
「龍だと……」
ヨコハマの市街地で、骸砦に向かって走っていた芥川が目を剥いた。視線の先にあるのは、骸砦を守護するように現れた巨大な龍だ。
「……」
芥川のすぐ傍を走っていた鏡花もまた、龍の姿に唇を噛む。
とてつもなく大きな敵が立ちはだかっている。目で、肌で、それが感じられた。異能を取り戻しはしたが、二人であの脅威に敵うのだろうか。
龍は、猛々しく威圧を振りまく。
●●●
上空にある衛星から骸砦を注視していた異能特務課も、龍の出現にいち早く気付いていた。特務課の通信室では、オペレーターの悲鳴に似た声が上がる。
「特異点異常値が上昇!六年前の二倍、二.五倍……異常値上昇中!」
責任者である坂口安吾は、危険水準を現す赤色点灯に強張った表情を浮かべた。焦燥感と祈りで汗が滲む手を机に叩きつけ、安吾が問う。
「A5158とA5116αの現在地は?」
オペレータが安吾に答えるより先に、機械を通した通信音声が響いた。
『おたついてんじゃねぇ、サンピン!』と。