第12章 DEAD APPLE
コレクションルーム、ドラコニアを無数の赤い螺旋が走り、赤い光球が輝きを強める。それはまるでドラコニア自体に意思が宿り、溢れ出る力を揮うかのようだった。
幾百、幾千の異能を喰らい膨れ上がった光は、其処に倒れている太宰治の遺体まで取り込もうとする。
太宰の遺体が浮き上がり、光に呑み込まれた。
赤い光の暴走を気分良く眺めていたフョードルは、やや驚いた顔をする。
「……君は欲張りだな、太宰君。死して尚、この街の終末を見届ける気か」
赤い光球に、太宰の体が溶けた。
直後、爆発を起こしたように光が周囲に広がった。窓硝子が砕け散る。光は最早、小さな塔などには収まりきらぬと云いたげに、骸砦から外へと滲み出て行く。
気が付くと荘子がドラコニアの扉に手をかけていた。
「何方へ?」
フョードルの問いに背を向けたまま「私は私の望みの為に」と告げて重い扉の奥へ消える。その扉に向け「良い終焉を」とフョードルが微笑みかけた。