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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第12章 DEAD APPLE


安吾は葉琉に向き直り「来てくださり、有難う御座います」と告げる。葉琉は「なんもなんも」と笑顔で応えた。

中也はそんな葉琉の笑顔を見ながら、矢張り姉妹だなと心の中で呟く。葉琉の笑顔は、少し前の葉月にそっくりだったからだ。だが、今はそんな事を考えている余裕はない。中也は話を切り出した。

「おい、葉月は何処だ」

澁澤の件も目的の一つだ。でも、中也にとっての"今の一番"は葉月なのだ。
葉琉は中也の言葉に「何のこと?」ときょとんとしている。安吾は眼鏡を指で直し「葉月さんは…」と一度言葉を切り、ちらりと葉琉を見てから中也に視線を戻す。

「太宰君に連れて行かれました」

「そんなこったろうと思ったぜ」

はぁっと溜息を零す中也。葉琉は逆に納得した様子だ。

「それで異能力が遣えるわけね」

「大方、それが狙いだろうな」

納得した二人と違い、「しかし」と安吾が目を伏せる。

「葉月さんは薬を盛られたようで、意識が無い状態で連れて行かれました。もしかしたらもう…」

「手前の眼鏡は飾りか?」中也の呆れた声が響く。安吾は顔をあげ「貴方は心配ではないのですか?」と尋ねる。中也は更に溜息を重ねた。

「葉月は裏社会を生きるマフィアだ。太宰が相手だろうが、簡単に薬を盛られる様なヘマはしねぇよ」

「自分の考えがあったか、或は……こりゃあ治ちゃんも一枚噛んでるかな?」

指を顎にあて、考える姿勢をとる葉琉。
不意に、中也は頸元にある違和感に手を伸ばす。昼間、葉月がくれたネックレスだ。まさかと思い勢い良く鎖を引きちぎる。筒状の物を振ってみると何やら音がした。
「何それ」と覗きこむ葉琉を横目に、その筒を適当に空いてる机に置き、拳を打つけて破壊した。中からは小さいチップの様な媒体が出てきたのだ。

「教授眼鏡、これを画面にだせ」

中也は安吾にそのチップを渡した。
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