第12章 DEAD APPLE
五秒後、能力は解けた。イヤホンからは再び太宰と中也の音声が発せられる。
『おかげで三発余計に殴られた』
『ついでだ。俺が殴り殺してやろうか』
どうやら時間が止まっている間に、太宰は監視役を倒したようだ。中也も判ったいたのか、驚きもせずに話を進めている。
『葉月ちゃん、葉琉ちゃん、お疲れ様。織田作が来るまで待機してるんだ』
「判りました」/「了解」
その後、直ぐに音声は途絶えた。二人はゆっくりとその場に座り込む。
「あー…疲れた」
「結構緊張してたのかな?練習より疲れた気がする」
太宰と中也がいると思われるビルの屋上からは、硬いものが壊れたかの様な鈍い音が響いていた。
「葉月、葉琉」
呼ばれた声に二人は振り返った。
「「織田作さん」」
「直ぐにここから離れるぞ。立てるか?」
織田作に手を引いてもらい、立ち上がる。まだ力の入らない脚でゆっくりと出口に向かって歩いて行く。
扉に手をかけた時、ドォーンという物凄い音で三人は振り返った。太宰と中也がいた筈のビルが揺れている。次の瞬間、ビルは弾け飛ぶかのように破壊された。
噂には聞いていた。あれが……"汚濁"
あの二人が双黒と呼ばれる所以だ。
その汚濁を向けられた相手こそ、澁澤龍彦だった。
織田作に催促され、足早にビルを後にした。