第12章 DEAD APPLE
首領に続きを促され、葉月は話を続けた。
「避難壕と秘密通路の確認をお願い致します。また、ヨコハマにいる全ての準幹部、構成員に伝達をお願い致します。以上です」
スクリィンの映像が消え、部屋の電気が付いた。紅葉は「全く……」と呟き乍、部屋を出て行く。続く様に芥川と樋口も出て行った。中也も立ち上がり、横目で葉月を確認する。どうやら電子機器の片付けを行なっている様だった。首領は未だに座っている。中也は首領に一礼し、部屋を出た。
中也が部屋を出ると、首領は「葉月ちゃん」と呼ぶ。葉月は首領へ歩み寄った。
「此れを渡しておこう」
首領から渡されたのは専用の入れ物に入った、二つの同じ形をしたネックレスだ。
「此方が君のだ。もう一つは中也君に」
「有難う御座います」
葉月は自分用といって渡された方を付け、もう一つをポケットに仕舞った。それを渡すと首領も部屋を出て行った。
葉月は片付けを再開する。ふと目に入ったのは、先刻、中也が感情を露わにした男"澁澤龍彦"の写真だ。直接会った事は無いが、この顔は覚えている。忘れる筈がない。
何故なら、葉月と葉琉の【漂泊者】が初めて実戦投入された任務にこの男が関わっていたからだった。