第12章 DEAD APPLE
そこにはある街の様子が映し出されたていた。画面の端には時刻と場所が示されており、深夜の台湾だという事が判る。早回しで流れる映像には次第に靄がかかり、濃い霧に変わる。映像は白一色となった。
「三年前の台湾、タイペイ市街にあった監視映像です。この霧は短時間で発生し、消失します。自然現象では先ずあり得ません」
映像を写真に切り替える。路面に這い蹲り、真っ黒に炭化した死体が転がっていた。
「霧の消失後、この焼死体が発見されました」
数多くの死体を見てきたマフィアでもここまで酷いのは多くない。その所為か紅葉は眉をひそめ、樋口は目を逸らした。中也は「此奴、異能者か」と口にした。
「その通りです、中也さん。炎遣いの異能者だったそうです」
葉月は次の写真へ切り替え、二つの写真を表示する。
「右側が一年前のシンガポールです。そして、左側が半年前のデトロイトです。両方共、あの霧のあとに発見された遺体です」
右側の写真には全身にトランプの手札が刺さり息絶えており、左側の写真では氷の柱が女を高く持ち上げていた。
「もうお判りかと存じ上げますが、右側の男性は手札を操る異能力を持ち、左側の女性は氷遣いでした。同様の案件が一二八件確認されています。おそらく、五〇〇名以上の異能者が犠牲になっていると考えられます。本題はここからです」
葉月が次の写真を映し出す。一人の男の写真だ。その写真に逸早く反応したのは中也だった。