第11章 【SS】海辺の休日
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葉月はシャワーを浴び終えて髪を拭き乍部屋へ戻った。中也は既にシャワーを浴び終えて購ったばかりの吟醸酒に手を出している。
「少しくらい待っててくれても佳いのに」
空になった中也の御猪口にそっと注ぎ、用意されていた自分の御猪口にも注ぎ椅子に座る。
「旨ェな、コレ」
「でしょ?でもあまり速度上げると回っちゃうよ。ほら、つまみも食べて」
同じく購ったばかりの栗羊羹を皿に移し中也へ渡す。
「ん、コレも旨い」
中也は一切れ頬張り酒を煽る。
「あーぁ。またそんな一気に呑んで」
そう云いつつ空いた御猪口には次の酒を注いであげる。そして、葉月も酒に口を付けた。
「美味しい」
皿に乗った羊羹を食べきる頃には酒瓶は残り半分くらいになっていた。葉月は日本酒を久々に呑んだ所為か少し酔いが回って来ている事に気が付いた。このまま飲み続けると酔潰れる事は直ぐに判った為、速度を落とす。しかし、中也はそれを許さなかった。
「俺だけ酔わせようたァいい度胸だな」
否、貴方既に酔ってるでしょ。そう云い掛けて言葉を呑み込む。ニヤリと笑った中也の顔は赤みを帯びており、誰がみても酔っていると一目で判るだろう。中也は吟醸酒を口に含むと軽々と葉月を抱き上げ寝台へ向かった。
「一寸、中也!」
少し酔いの回っている葉月の力じゃ抵抗にもならず、其の儘寝台へ降ろされる。直ぐ様中也の唇が葉月の口を塞ぎ、こじ開けられた口内一杯に液体が流れ込む。どうやら先刻口に含んだ吟醸酒の様だ。強制的に喉を通され、それが判ると中也は漸く葉月から離れた。
葉月の肩は呼吸に合わせて大きく上下し、唇の端からは呑み切れなかった吟醸酒が溢れる。
「ほんッと…この酔っ払いが」
悪態を吐くも中也はどこ吹く風だ。ニヤリと笑い葉月の様子を伺っている。一気に呑み込んだ酒はじんわりと葉月の躰に酔いを回していく。鼓動が速くなるのが自分でも判る。頭がぼーっとする。
「昨日は声を抑えてたみてェだが、今日は遠慮なく哭けよ」
耳元で囁かれぞわりと躰が震えた。葉月には中也を受け入れる覚悟をするしか無かった。
翌朝、葉月に残ったのは強制的に喘がされる断片的な記憶と、激しい腰痛だった。
【海辺の休日】完