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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第11章 【SS】海辺の休日


声を出して笑った。こんなに笑った事なんて初めてではないだろうか。それくらい大声で笑った。そうしないと、目に見えない何かに押し潰されてしまいそうだった。

「葉月、何か食べたの?」

恐る恐る近付いて来た葉琉が尋ねる。横には中也もいる。

「違う違う。何かもう可笑しくて、三人共変わらないなぁって」

中也と葉琉は顔を見合わせる。そして、二人で笑い出した。

「一寸、狡くないかい?」

太宰が背後から葉琉に抱きつく。それすらも何故か面白く、三人は笑い続ける。よく判っていない太宰だけがぽかんと三人を眺めていた。

「あ〜表情筋が仕事した」

笑い疲れたのか葉琉がふぅと息を吐く。葉月も花火を手に取り再開する。

「葉琉の表情筋が仕事してない日なんて有るのかい?其処の日陰者二人組なら判るけど」

太宰は葉琉の頰をぷにぷにと押している。

「聞き捨てなりませんね、太宰さん。私は表情豊かに生きてますよ」

「手前のは作り笑顔だろ」

「作った笑顔も結構表情筋使うんですよ」

「まぁ、中也には無理だよね」

「そんな事ありませんよ」

今度は葉月が中也の頰をぷにぷにと押す。「やめろ」と口では拒否するものの、特に抵抗しない中也。

「中也も部下の前ではキリッとしてますけど、二人の時は結構笑うんですよ」

「……やめろ」

中也は帽子を深めに被り顔を隠した。口に手を中ててニンマリと笑う太宰と葉琉に中也の蹴りが飛んだが、二人とも綺麗に躱した。
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