第11章 【SS】海辺の休日
●●●
中也と葉月は一度部屋へ戻り、身支度を整えて、お土産屋さんが並んでいる街へ繰り出した。
「中也は何か欲しいのあるの?」
「んー……いい酒が有ればなァ」
「またお酒の事ばっかり。弱い癖に好きだよねぇ」
「ほっとけ」
葉月は何かを見つけると駆け出す。中也は葉月に腕を引かれて後について行った。葉月は店先で売り出されていた栗羊羹に目を輝かせていた。
「本当に羊羹好きだな」
「羊羹は正義」
「エリス嬢みてェな事云うな」
鼻で笑う中也を気にする事なく、葉月は栗羊羹を持って購いに行こうとする。中也は葉月の腕を掴んで持っていた栗羊羹をそっと奪うと「仕様がねェな」と云って会計に向かった。
「ほらよ」
会計を済ませた中也は紙袋に入った栗羊羹を葉月に手渡した。葉月は其れを両手で受け取り「有難う」と笑う。
「中也も何か欲しいのないの?」
「酒」
「でも、こんな処に葡萄酒処か洋酒自体珍しいと思うよ。偶には日本酒なんで如何でしょう」
葉月が指したのは如何にも老舗な日本酒の店だ。
「そうだなァ。折角持って来た葡萄酒も手前に呑まれちまったからな」
「御免なさい」
中也と葉月は日本酒の店を覗いた。中には様々な種類の日本酒が並べられている。葉月は吟醸酒を手に取った。
「これならフルーティだから葡萄酒好きの中也でも飲み易いんじゃないかな?あと、羊羹にも合うよ」
「何だよ、もう羊羹喰う気かよ」
「何時食べても美味しいよ」
「これは私から中也への贈品ね」と葉月は足早に会計へ持って行った。中也は店先のお酒を眺め乍、葉月を待っていた。
「はい」
「おう、有難な」
中也は葉月から渡された袋を受け取った。