第11章 【SS】海辺の休日
程なくして中也が戻ってきた。
葉月は「先刻初めて軟派されたわ」と言ってみた。 中也は食い気味に「如何云う事だ」と尋ねてくる。
「如何もこうも中也が長ーいトイレの間、若いお兄さん二人組に絡まれて蹴り飛ばそうかと悩んでたら、探偵社の国木田さんが助けてくれたの」
「国木田ってあの国木田か?」
「そう、太宰さんの被害者の国木田さん。処で、トイレに時間が掛かった理由は…太宰さんかな?」
中也は答えない替わりに凄く厭そうな表情を浮かべた。
「正解のようね」
「チッ」
「と云う事は、葉琉も来てるのかなー?」
葉月は建物の中をぐるりと見渡す。すると、探偵社と思われる集団が昼食を取っていた。葉月は店員を呼んで探偵社全員分のかき氷と、自分と中也のかき氷、それと伝言を頼んだ。
「そこまでしてやる必要は無いンじゃねぇか?」
「葉琉もお世話になってるし、国木田さんには助けられちゃったからねぇ。そりゃあ中也が居れば絡まれずに済んだけど、トイレ行ってたからねぇ。仕方がないよねぇ」
ニコニコと話す葉月に中也はバツが悪そうに溜息を吐くしかなかった。
頼んだかき氷が運ばれて来た。苺や練乳が乗ったかき氷だ。中也の前にも同じものが置かれる。
「なんか…うん。可愛いよ」
「手前が勝手に頼んだンだろ」
「食べないの?」
「食べるけど…」
中也の返事に満足気た笑い返すとかき氷を食べ始めた。
食べ終わる頃、探偵社御一行を確認すると如何やら同じものが運ばれているようだ。一斉にこっちに視線が集まったので、取り敢えず手を振っておいた。中也はそれを確認すると「行くぞ」と席を立つ。葉月も中也の後に付いて店を後にした。