第11章 【SS】海辺の休日
次に目を覚ますと、外は明るさを取り戻していた。背後からは眠りについた時と同じく、中也の寝息が聞こえる。腕を伸ばし、時間を確認すると丁度朝食が始まる時間だ。朝食はバイキング形式の物を頼んでいた。葉月はもぞもぞと中也の腕の中から出ようとする。その時、中也の腕に力が籠った。
「きゃっ!」
首筋に温かい感触が這う。
「逃げンなよ」
「逃げてないってば。もう朝食の時間だから準備しようと思っただけ」
中也も時計を確認すると「もうこんな時間か」と呟いて再び葉月を抱き締める。
「あの…中也さん、この手は何?」
「あァ?自分の女抱き締めるのに理由がいるか?」
「……いらないけど」
葉月は大人しく中也の腕の中に収まっていた。しかし、時間は待ってはくれず首領や紅葉達を見送る為、中也は渋々放してくれた。
お互いに準備を整えて会場へ向かい、偶々一緒になった紅葉と共に朝食を食べた。朝食が終わるとロビーまで首領達を見送り、その後また部屋へ戻った。
「……眠い…」
「先刻起きたばっかじゃねぇか」
中也は呆れ顔で寝台にうつ伏せになっている葉月の頭を撫でる。葉月はガバっと勢い良く顔を上げた。
「でも、海行く」
「お、おう」
急に動いた葉月に中也は心から驚いていた。
二人は昨日乾かしておいた水着に着替えて二回目の海へ繰り出した。