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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第11章 【SS】海辺の休日


「俺は……人間じゃァねぇ。否、躰も人格も人間のそれに近い。だが、この人格は俺の中にある"力"を抑え込む為の安全装置だ。表面上の模様だ。この模様は何時剥がれ落ちるかも判ンねぇ。そりゃあそうだ。この人格は"力"を抑え込む為だけに後付けされたモンだ。遅かれ早かれこの躰の主人じゃァねぇ俺は、俺と云う人格は剥がれ落ちる」

中也は間を空けて視線だけ葉月に向けた。葉月は俯き、でも真剣に話を聞いている。

「人並みの人生も送れるか判らねぇ俺にも、大切な人が出来た。こんな俺が其奴の人生に関わって良いのか、最後には苦しめるだけなンじゃねぇかって悩んだ。でも其奴は、葉月は俺を好きだと言ってくれた」

中也は視線だけでなく、顔を葉月へ向けた。葉月も気が付いたのか、俯いていた顔を上げ中也を見た。その瞳は微かに潤んでいた。

「どんな人間も、人格なんてこの肉の器の模様に過ぎないよ。私は中也に出会って、恋をした。これからもこの気持ちは変わらない」

「葉月…」

「若しかしたら、中也と出会えたのは神サマからの贈品かもね。中也と同じくらいの歩幅で人生を歩める私と、お互いに寂しくない様に、惹かれあったのかもね」

そう言って笑う葉月の瞳からは一筋の涙が溢れた。耐えきれず中也は葉月を抱きしめた。

「俺を……好きだと言ってくれて、有難う」

「話してくれて、有難う」

葉月も中也の背中に手を回し、抱きしめた。

二人はそのまま寝台へ横になった。中也は葉月を後ろから抱きしめる形で眠りについた。葉月は腰に回されている中也の手に自分の手を重ねる。




ーー神サマ…若しもまた願いを叶えて下さるのなら
出来れば…少しでも二人の時間が長く続きます様に
少しでも彼の命を留められます様に……



葉月はそっと瞼を閉じた。
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