第11章 【SS】海辺の休日
試合は大接戦だ。中也が決めれば直ぐに立原、梶井ペアが返し、余り乗り気では無かった芥川も此処まで来たならと腹を括り、中也と良い連携を見せていた。
そして、9対10で立原・梶井がマッチポイント…
立原がサーブを打とうとした時、立原の視線は海へ釘付けになった。
「おィ、立原ァ。早く打てよ」
中也の声にも反応を示さず、海を見つめる立原。中也も訝しげに立原の視線を辿った。
「なっ!?」
立原の視線の先にはエリスと遊ぶ葉月の姿が。先刻まで羽織っていた上着を脱ぎ、紫に白の水玉があしらわれた襞付きのビキニだ。中也は反射的に反対コートにいる立原元へ行きに蹴りを入れた。
「おィ手前、何見てンだよ。蹴り殺すぞ」
立原は砂に埋もれ乍「もう蹴ってるっス」と返す。ガバッと起き上がった立原は小声で中也に尋ねた。
「葉月さんって躰は十六歳くらいでしたよね!?いまの高校生ってあんなに発育いいンすか!?」
立原は両手で怪しい手つきをする。中也は更に一撃蹴りを入れた。
「知るかっ!ンなもん、殺すぞ」
そんな二人のやり取りを、言葉は聞こえずとも察した紅葉が「彼奴らは餓鬼か」と呆れていたが、首領にはエリスしか目に入っていなかった。
試合は再開され、立原のサーブを取った中也が怒りのアタックを決め10対10の同点となった。タイブレークを行うか否かが四人で話合われ、予定通り十一点先取となった様だ。
芥川のサーブを取った梶井が立原の上げたトスで打ち、それを中也が飛び込んでレシーブし芥川のトスで打ち込む。樋口はその様子を固唾を飲んで見守っていた。
今までで一番長いラリーが続き、最後は中也のアタックが決まり試合は終了した。
「ッしゃー!芥川もよくやったぜ!」
中也は芥川の頸に腕を回してワシワシと乱暴に頭を撫でる。「ゴホッ…痛いです、中也さん」と冷静に返事をする。立原と梶井は悔しそうではあったが、如何やら楽しめたようだ。
「お疲れ様でした、皆さん」
海から上がって来た葉月とエリスが四人に告げた。中也は樋口から葉月の上着を貰い、葉月の肩に掛けた。
「着てろ」
「?はい」
葉月は訳がわからず上着を着た。
「エリスちゃん、今日は楽しめたかい?」
「とても楽しかったわ」
首領はエリスの返事を満足気に聞いていた。