第11章 【SS】海辺の休日
広津は首領の後ろに立っており、芥川は敷物の上で暑さにやられている。中也は首領の横ではしゃぐ連中をただ見つめていた。首領は視線を中也に向け「処で」と話を切り出した。
「葉月ちゃんの様子はどうかね?」
「はい。随分と感情と表情が合ってきたかと思います」
「それはいい傾向だね。太宰君と葉琉ちゃんが組織を去ってから彼女も苦労したからねえ。太宰君が行う筈だった仕事を引き受けて、"裏切り者の姉"として処罰を要求する連中まで現れた。まぁ、そう云う連中は気が付くと静かになっていたがね」
中也は黙って俯いた。
「葉月ちゃんを守ってきたのは君だ。君は今の彼女の笑顔を一番近くで見続ける権利がある。ほら」
首領に催促され顔を上げると砂浜でエリス、樋口、銀とお城を作っている葉月の姿があった。葉月は中也の視線に気が付くと大きく手を振っている。
「行ってあげなさい」
中也は帽子を取り、首領に礼をすると葉月達に向かって歩いて行った。