第11章 【SS】海辺の休日
二人はサンダルに履き替えて部屋を出た。中也は暗い鼠色の五分丈パンツに朱色のパーカーを着ていた。
「帽子は被ってくんだね」
「ん?あァ、まぁな」
中也にしては歯切れが悪い返事だなぁと思いつつも「ふーん」と聞き流した。
ロビーへ降りると既に芥川、樋口、立原、銀、梶井が集まっていた。皆各々持参した水着を着用している。葉月は樋口へ駆け寄って行った。
「樋口ちゃん可愛いー!」
「そんな、葉月さんの方が可愛いですよー!」
二人はキャッキャと女子っぽい会話をしていた。樋口も上にパーカーを羽織っていて中がどうなっているか判らないが、下には緑地のペイズリー柄のパレオを巻いていた。
「ねぇ、樋口ちゃん。まさか…」
葉月はそのパレオを指した。樋口は当たり前の様に小さい拳銃を隠していた。
「うん、樋口ちゃんだわ。どんなに可愛くても樋口ちゃんだわ」
葉月は納得した様に頷いた。そして再びキャッキャと女子っぽい会話を始めた。
そんな二人を呆れ顔で見ていた中也は目の端に捉えた芥川の格好に驚愕した。下は水着なのだが上には何時もの黒外套を羽織っている。
「はァ!?芥川、何だよそれ!」
「僕の異能は外套が無いと駄目な故…」
「否、もっとなんかあンだろ!脱げ!見てるこっちが暑苦しい!」
「なっ!やめて下さい、中也さん!」
「立原、梶井!手前らも手伝え!」
中也に言われる儘、手を貸そうとする二人。しかし、その二人よりも速く中也と芥川の間に樋口が飛び込んだ。
「やめて下さい、中也さん!芥川先輩は繊細なんです!」
「どけ、樋口!その格好は繊細とかそう云う問題じゃあねぇ!」
「芥川先輩は普段と違う格好が恥ずかsー」
「煩い、樋口!」
「す、済みません!」
凄い剣幕で樋口を止める芥川に、樋口は急いで謝罪した。