第11章 【SS】海辺の休日
「わぁ、きれーい」
葉月は目の前の光景に心が踊った。窓際に駆け寄りベランダに出る。
「風、気持ちー」
風に靡く髪を耳に掛けた。中也は荷物を置いてから葉月の横に並んだ。風に飛ばされない様に帽子を片手で抑えている。
「こりゃァ良い眺めだ」
二人の目の前には何処までも続く碧い海と青い空。葉月が「来てよかったね」と笑掛けると、中也は「そうだなぁ」と笑ってくれた。
部屋に戻り荷物を漁っている葉月に、中也は「首領達も一緒で本当に良かったのか?」と尋ねた。
「中也は厭だった?」
「否、そういう訳じゃねぇけど。がっかりしたかなぁって」
「そりゃあ最初は驚いたけど、偶にはこう云うのも良いかな?って」
そう言ってにっこりと笑う葉月に中也も安心した様に笑った。
「ほら、中也も着替えなきゃ。水着持って来てるしょ?」
葉月は忙しなく水着を持ってお風呂場へ消えて行った。
その様子をベランダから眺めていた中也は懐から煙草を取り出し火をつける。登って行く煙は青い空へ吸い込まれていく様だった。
(あんなにはしゃいでる葉月は久々だなぁ)
そんな事を考え乍、煙を見つめていた。丁度一本目が吸い終わる頃、お風呂場から葉月が出て来た。中也はその姿に一瞬息を呑んだ。そして直ぐに目を晒す。葉月は水着姿の儘自分の鞄を漁っていた。「あった」という声が聞こえ横目で見ると上から薄い桃色の半袖パーカーを羽織ったようだ。一瞬だった為よく判らなかったが、あれがビキニというヤツなのだろう。パーカーの下からは薄い紫色のレーススカートが見えている。
中也は急いで自分の鞄から必要な物だけを持ち風呂場へ入った。鏡に映る自分の顔は耳まで赤くなっている。
「情けねぇ」
自分の声だけが風呂場に響いた。