第11章 【SS】海辺の休日
葉月が一人になった処を見計らい樋口が駆け寄って来る。
「葉月さん、噂は本当だったんですね!?」
目を輝かせ詰め寄って来る樋口に葉月は引き気味に「噂?」と聞き返した。樋口は「知らないんですか?」と葉月の耳元でこっそり教えてくれた。
「何でも、中也さんがお酒の席でご機嫌に語っていたそうです。葉月さんとお付き合いを始めたって」
「え!?一寸待って…お酒の席?」
「情報源はあの方達からかと…」
樋口の視線の先には広津、立原、梶井の姿。確かにあの三人とはよく呑みに行く事は知っていた。たぶん立原あたりだろうなと葉月は思った。
「じゃあ、もう皆知ってるの!?」
「下級構成員を含め、大方は知っているかと…なんと云っても葉月さんは、準幹部であるにも関わらず下級構成員にも丁寧且つ優しい対応で有名ですから。慕っていた方も多かったようですよ。
その高嶺の花的存在の葉月さんが、幹部である中也さんとお付き合いを始められたと、専らの噂です」
葉月は開いた口が塞がらない。連休明け、本部へ行くのが更に厭になった。