第10章 華麗なる幕引きを
執務室へ戻ると先刻までは居なかった人影があった。
「中也、もう躰は大丈夫なの?」
「おう。葉月も首領も心配し過ぎなンだよ」
其処には何時もと変わらない中原中也がいた。
「葉月は躰大丈夫なのか?【漂泊者】の影響とか…」
「 今回は短かったから少し寝たらいつも通りに戻ってたよ」
中也は葉月に歩み寄るとそっと葉月の髪を撫でた。
「悪ィな。無理させちまって」
「中也の無理に比べたら私のなんて可愛いモノよ」
ふふっと笑う葉月に中也も一緒に笑った。その時、二人の端末が同時に鳴り出した。葉月は画面を確認すると広津さんからのようだ。中也の方は如何やら部下からの様だ。二人は少し離れて電話に出た。
「はい、萩原です。……そうですか、予定通りですね。……有難う御座います、広津さん」
葉月が電話を切ると中也も話し終わった様だ。
「何だったの?」と葉月が尋ねると「芥川の野郎がまた単独行動を取ったみてェだ」と返ってきた。どうやら内容は広津が言っていた事と同じなのだと葉月は思った。
「首領には部下から話が行く。取り敢えず指示が有るまで待機だ。いいな」
「了解です」
中也と葉月は待機し乍、各事務作業をこなした。