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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第9章 双つの黒と蕾の運命


「私の運命は三つでしょう。一つ目は馴染まない能力を躰に宿した負担で早死にですかね。二つ目は【漂泊者】に耐えられず死亡。そして、最後の一つは…」

ここで言葉を切った。葉月は顔を上げると笑っていた。しかし、その笑顔は泣いている様にも見えた。

「中也には話すのかい?」

「…悩んでいます。言えば中也は何か手はないかと探してくれるでしょう。でも、今まで通り接して貰えるか不安なんです」

「中也はそんな男ではない、そうだろ?」

「…では、太宰さんは葉琉に私が長くないと言えますか?葉琉はきっと悲しむでしょう。能力を持って産まれた自分を責めるでしょう。その姿に耐えられますか?」

太宰は言葉を発さなかった。

「意地悪を言ってしまって済みません。葉琉に伝えるか如何かは太宰さんに任せます。今、葉琉の一番側にいるのは太宰さんですから。私も、もう少し考えてみます」

「葉月ちゃん」

「何ですか?」

「今なら君の気持ちが判る気がするよ」

葉月は寂しそうに微笑んだ。
不意に太宰は屋上の出入り口に視線を移した………。







葉月は昨日の事を思い出し、ふぅと息を吐いた。
真逆、こんなに早く伝えようと決心するとは思っていなかった。真逆、中也が気付いているとは思っていなかった。
この世は『真逆』の連続だ。不意に、最後の一つの可能性に賭けてみたくなった。
そっと中也の髪を撫でる。次に頰に触れ、中也の右手に自分の右手を重ねる。手套がない所為か、何時もより暖かく感じた。何れも彼も全てが愛おしかった。

「大好きだよ、中也」

眠っていた筈の中也の左手が葉月の頰へ伸びてきた。中也はゆっくりと瞼を開けた。
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